HCIは従来のインフラ製品・ソリューションと何が異なるのか?

ここ1年ほどの間で、エンタープライズITの分野において「ハイパーコンバージドインフラ」(以下、HCI)の存在感が急速に高まりつつある。HCIとは、簡単に説明すると「仮想化インフラを構築するために必要なハードウェア/ソフトウェアを一体にして提供するアプライアンス型製品」のことを指す。ただし、この定義だけではHCIがなぜこれだけ注目を集めているかの説明にはならない。なぜなら、同じ謳い文句の製品はこれまでも多く存在したからだ。

例えば、サーバと共有ストレージ装置、場合によってはネットワーク機器までを一体化した「垂直統合型アプライアンス」「コンバージドインフラ(CI)」といった製品は既に世に多く存在するし、SI企業が独自にハードウェアとソフトウェアを組み合わせて同様のパッケージソリューションを提供することもある。

しかし、HCIはその根本的な仕組みにおいて、これらの製品とは明らかに一線を画す。そしてそのユニークな仕組み故に、仮想化インフラの構築・運用に革命をもたらすのではないかと大きな期待を寄せられているのだ。

「HCIの導入メリットを理解するには、従来の仮想化インフラの主流であった『3層アーキテクチャ』とは根本的に異なる、HCIならではのユニークなアーキテクチャについて理解しておく必要があります」

こう語るのは、デル株式会社 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 ビジネス開発マネージャ 小野誠氏。

デル株式会社 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 ビジネス開発マネージャ 小野誠氏

「これまでの仮想化インフラのアーキテクチャは、『仮想サーバ』『共有ストレージ』『サーバと共有ストレージの間をつなぐSAN』の3階層で構成されていました。しかしHCIでは、この3つがすべて単一のサーバノードの中に集約されています」

サーバノードの中身自体は、基本的にはオーソドックスなIAサーバのアーキテクチャに基づいて設計されている。「では、物理サーバを単体で利用するのと何が違うのか?」、そう思われるかもしれない。HCIがユニークなのは、このサーバノードを横並びで複数並べていくことで、システム全体のキャパシティをリニアに拡張していける点にあるのだ。

従来の仮想化インフラとは根本的に異なるHCIのアーキテクチャ

これまでの3層アーキテクチャでは、サーバ、SAN、ストレージ、それぞれの階層で個別にリソースを拡張しても、場合によっては別の階層がボトルネックになったり、あるいは拡張性に上限が存在することも少なくなかった。しかしHCIでは、サーバ機能とストレージ機能の両方を内包したノードを順次追加していくことで、コンピューティングリソースとストレージリソースの両方を同時に拡張できるため、ボトルネックに突き当たることなくリニアにシステムを拡張していけるのだ。

また、こうしたアーキテクチャにおいてはSANは一切不要となるため、サーバとストレージ間のネットワークについてユーザーが考慮する必要は一切なくなる。サーバノード間の通信も、あらかじめHCI製品側で用意されている専用のネットワークインフラが使われるため、ユーザーやSI企業がネットワークの設計や拡張に頭を悩ます必要はない。

EMCジャパン株式会社 コンバージドプラットフォーム&ソリューション事業部 vArchitect シニアマネージャー 三邉祥一氏によれば、HCIはこうした“柔軟な”拡張のみならず、“粒度の細かい”拡張が行える点も大きな特徴だという。

EMCジャパン株式会社 コンバージドプラットフォーム&ソリューション事業部 vArchitect シニアマネージャー 三邉祥一氏

「SANストレージを拡張するには、それなりの額の投資と時間、手間が必要です。しかしHCIは、SANストレージよりはるかにストレージ容量が小さいサーバノードを足していくだけで、簡単にストレージのキャパシティを拡張できます。そのため、まずは小さな規模からシステムを立ち上げたい場合や、将来のシステム拡張が読めないようなケースに適しているといえます」

HCIを理解するために欠かせないキーワード「SDS」

では、HCIは具体的にどうやって、サーバノードを追加するだけで簡単にシステムを拡張できるのか。この鍵を握るのが、「SDS(Software Defined Storage)」と呼ばれる技術だ。これはストレージ仮想化技術の一種で、ソフトウェア技術を駆使して汎用IAサーバだけで共有ストレージを実現しようというものだ。

ここ何年かの間で、CPU性能の飛躍的な向上とソフトウェア技術の進化を背景に、汎用サーバと仮想化ソフトウェアを組み合わせたサーバ仮想化のソリューションがまたたく間に普及したが、SDSもこの潮流の延長線上に位置付けられる。具体的には、分散ストレージソフトウェアによって複数の汎用サーバの内蔵ディスクを論理的に束ね、仮想化し、アプリケーションに対してあたかも単一の共有ディスクであるかのように見せかけるというものだ。

HCIのユニークなアーキテクチャや、優れたスケーラビリティといった特徴は、このSDSの技術があって初めて実現したものばかりだ。まさに「HCIの心臓部」といってもいいだろう。そのため、現在市場に出回っているHCI製品は、それぞれが搭載したSDSソフトウェアの機能を互いに競い合っている。優れた性能を謳い文句にしているものもあれば、従来のエンタープライズストレージアレイと同等の信頼性や高機能を打ち出すものもある。

ちなみに三邉氏によれば、現在市場に出回っているさまざまなSDSソフトウェアのうち、主要なものを複数そろえるベンダーはDell EMCだけだという。

「アプライアンス型HCIのシェアNo.1のNutanix、VMwareが提供するvSAN、そして汎用サーバをSANストレージとして使えるようにするScaleIO、この3種類のSDSをDell EMCでは1社で提供しています。そのため、どのようなお客様のニーズに対しても適切なHCIソリューションを提供できる、唯一のベンダーであると自負しています」

次回は、こうした「Dell EMCならでは」のHCIソリューションの特徴について、幾つか紹介してみたい。

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