急速に注目を高めつつある「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」

近年、「ハイパーコンバージドインフラ」(以下、HCI)と呼ばれるIT製品がにわかに注目を集めつつある。IT専門調査会社のIDC Japanが2016年8月に発表した「国内コンバージドシステム市場予測」によると、2015年のHCI製品の国内市場規模は40億円強。それが2017年には150億円にまで伸びると予測しており、さらに2020年には290億円強の市場規模まで成長すると予測している。

2017年1月現在では、HCIはまだ一般に広く認知される段階まで来ていないが、EMCジャパン株式会社 コンバージドプラットフォーム&ソリューション事業部 vArchitect シニアマネージャー 三邉祥一氏によれば、ここ1年間での急速な台頭には目を見張るものがあるという。

「確かにさまざまな調査の結果を見ても、HCIはまだ企業のIT担当者の間で広く知られた存在ではないかもしれません。しかしその一方で、Dell EMCが昨年3月に発表したばかりのHCI製品の売上げは、わずか9カ月の間で驚くほど伸びています」

EMCジャパン株式会社 コンバージドプラットフォーム&ソリューション事業部 vArchitect シニアマネージャー 三邉祥一氏

こうしてHCIが注目を集める背景には、企業のITインフラの運用を大幅に効率化してくれるのではないかとの期待がある。デル株式会社 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 ビジネス開発マネージャ 小野誠氏は、次のように説明する。

「サーバ仮想化技術が広く普及して、企業のITシステムを仮想化インフラ上で構築・運用するのはすっかり当たり前になりました。それにより従来のシステム構築・運用の課題の幾つかは解決できましたが、依然として効率化やコスト削減の余地は残されており、また仮想化の導入で新たに持ち上がってきた課題もあります。これらを解決するための手段として、現在HCIに大きな期待が寄せられているのです」

デル株式会社 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 ビジネス開発マネージャ 小野誠氏

HCIを導入することで企業は何が得られるのか?

では、HCIとは一体どんな製品であり、どのような課題を解決してくれるものなのか。“Converged”(1つにまとめる、集約する)という名が付いていることからも分かる通り、HCIは仮想化インフラを構築するために必要なサーバやストレージといったシステムコンポーネントを1つにまとめ上げたアプライアンス製品だ。

類似の製品ジャンルに「コンバージドインフラ(CI)」というものがある。これも同様に、仮想化インフラを構成するサーバや共有ストレージ装置、仮想化ソフトウェアなどをひとまとめにしたものだが、HCIはこれに「ハイパー」が付いており、CIより「さらに進化した製品」として生まれたものである。

より具体的にいうと、標準的なx86サーバノード上に、「SDS(Software Defined Storage)」と呼ばれる、ソフトウェアを使って共有ストレージ機能を実現する技術を使うことで、SANのような共有ストレージ装置を排してサーバノードの内蔵ディスクだけでストレージを構成できるようにした。これにより、サーバノードを複数並べるだけで、仮想化インフラを構成できるようになったのだ。

こうしたHCIの特徴を生かすことで、企業は次のような導入メリットを手に入れることができる。

インフラの導入・構築にかかる時間やコストの節約

HCIでは、仮想化インフラを構成するサーバ、ストレージ、仮想化ソフトウェアなどのハードウェア/ソフトウェアコンポーネントが、すべて組み合わされた形で提供される。そのため、各コンポーネントを個別に選定・調達し、互換性のチェックを行い、それぞれをセットアップし……といったような、これまでユーザーが行っていた一連の初期導入作業が、ほぼ不要になる。三邉氏によれば、Dell EMCのHCI製品は「開梱から仮想化環境が立ち上がるまで、ほぼ一日でセットアップが完了する」という。

またシステムの投資対効果を高める上でも、HCIは極めて有用だと同氏は指摘する。

「IT製品を5年間の契約期間で購入し、初期導入と次システムへの移行にそれぞれ半年間ずつを費やすと、実質的に利用可能な期間は4年間しか残されません。しかしそれぞれを1カ月間ずつで済ませば、4年10カ月使えることになり、結果としてシステム全体の投資対効果に大きな差が生じることになります」

インフラ運用にまつわる手間やコスト、リスクの低減

仮想化インフラは仮想化ソフトウェアやOSなど、多くの部分をソフトウェアに依存している。そのため、もしソフトウェアに不具合やセキュリティ上の脆弱性が見付かった場合は、いち早くパッチを適用し、システムの健全性を常に保っておきたいところだ。

ただし、パッチ適用の必要性は重々承知していても、多くの日本企業では業務へ与える影響を恐れるあまり、本番システムが稼働するシステムへ変更を加えることを避ける傾向にある。その結果、いわゆる「塩漬け」のシステムが次々と出来上がってしまうわけだ。

しかしHCIなら、開発元が正常動作を確認した上でパッチが提供され、かつシステム無停止でのアップデートにも対応しているため、業務へ与える影響を最小限に抑えながらシステムを安全にアップデートしていくことができる。

すべてのハードウェア/ソフトウェアのサポート窓口が1つに

これまでは、サーバやストレージや仮想化ソフトウェアなどを個別に調達して組み合わせたシステムで不具合が生じた場合、まずはコンポーネントごとにどのハードウェアやソフトウェアで問題が生じているかをユーザー自身が切り分けた上で、各製品の開発元に問い合わせる必要があった。

しかしHCI製品の多くはアプライアンス製品として、開発元ベンダーがすべてのハードウェア/ソフトウェアに関する問い合わせに応じてくれるため、トラブル対応に掛かる手間や時間を大幅に削減できる。

「Dell EMCでは、HCI製品を構成するすべてのハードウェア/ソフトウェアに関する対応を1つのサポート窓口で受け付けているので、ユーザーがトラブルの原因を切り分ける必要がありません。この点は、実際にHCI製品を導入したユーザーから大変好評を博しています」(小野氏)

以上、今回はHCIの基本的な事柄について概説した。次回はもう少し深く踏み込んで、HCIの技術面における特徴について紹介してみたい。

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